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(あ、やばい) そろそろ帰ろうと、座っていた階段から立ち上がった途端視界が真っ白に染まって足元がふらついた。 そのままふらりと前に崩れる政宗を慌てて引き戻したのは、隣に座っていた佐助の右手だ。 掴んだ肩ごと引き戻して政宗と目を合わせれば、とろんと微妙に焦点の合わさっていない隻眼に顔を顰めてみせる。 「ちょっと、伊達ちゃん大丈夫?」 「……何でもねえよ」 「何でもないって顔じゃないでしょ」 お兄さんに見せてみなさいと、口調こそ軽いものの心配そうに覗き込んでくる佐助の目線が痛い。 汗が首に流れ落ちていくのを理由に視線をずらす。 わざと乱暴に手の甲で拭った。 じりじりと照りつけてくる太陽の光が憎らしいほどに眩しい。 猛暑のような苛烈さはない。その代わり油断すればいつの間にかに水分を持っていかれる。 あついとすら感じない熱、気がついたときにはもう遅い。低温火傷のような。 じわじわと包み込んでくる熱気に眩暈も起きようってもんだ。 「……暑ぃ」 「あ、もしかして日射病?」 小さな声を耳聡く聞きつけると、佐助はすっと政宗の額に手を当てて熱をはかる。 ちょっと熱っぽいかな、と呟くその手もいつもより熱い。 熱を持った後頭部がズキズキと痛む。 労わるように佐助が熱くなった髪の毛を撫でてくる。 過保護と思うくらい、佐助は人を甘やかすのが上手い。 「今日は暑いもんねー。どっかで休憩しよっか」 「shit. 暑苦しいんだよお前」 吐き捨てて間近に迫った顔をじろりと睨みつけた。 元々自分が暑さに弱いとはいえ(こちとら生まれも育ちも奥州だ)、 同じ場所に同じ時間一緒にいた佐助がふらつきもせず平然と人の世話をやけるところが気に食わない。 睨まれてもちっとも気にしないところも気に食わない。軽くあしらわれているような気がする。 「It’s too hot today……」 頭上から降り注ぐ陽射しは和らぐことを知らず、背中に回された手は日に当たってしっとりと熱を帯びている。 くらくらと頭痛の止まない頭で考えるのが面倒になって、政宗はそのまま佐助に寄りかかると肩に顎を乗せて目を瞑った。 暑い。 暑い、熱い。何もかも。 一度意識すれば止まらない。 こんなに眩暈がするのは、頭痛が止まらないのは太陽のせいだ。 佐助の肩越しに太陽を睨みつける。燦燦と照り付ける太陽が憎らしいほどに眩しい。 気に食わないから手の親指を人差し指を立て銃の形を作り、堕ちろといわんばかりに照準を向けた。 「Bang!」 「あ、今心臓に当たった」 「お前じゃねえよ、馬鹿」
トリガーハッピー 06.6/10