おかえり



家があるならおかえりなさい。
迎えてくれる人に、うんとわがままを言っておあげなさい。
いなくなってからでは遅いから。


「我が侭、か。親孝行はしなくていいのかい?」
「我侭であってるんですよ」


空がすっかり赤くなり、お寺のお鐘がぼんと鳴る。
カラスが鳴くからかえりましょう。
みんなで一緒にかえりましょう。一緒にご飯をたべましょう。


「親は最低でも二人はいるけど、我侭を聞いてくれる人はそれより少ないかもしれないからね」
「……なるほど」


だから、家があるならおかえりなさい。
大切な人のもとへ、おかえりなさい。
あなたを迎えてくれるから。



「そろそろ帰ろうか」
「ねえ。涼浬ちゃんに何かお土産買って帰ろうよ」