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Cry for the moon



「あー、みんなに愛されたい」
「なんだよいきなり」

焦がれるような顔で空を眺めていたと思ったら、この言葉。
京一には訳がさっぱりわからない。

「大体お前、美里たちにこれでもかというほど愛されてるじゃねえか」
「みんなに愛されたいっつってんだろ」
「頭大丈夫か?」
「……いいんだ、どうせ」

容赦のない啖呵が帰ってこない辺り、なかなかの重症だ。
高龍は寂しそうな顔のまま、手の中のものをくしゃりとつぶす。
ゴミはきちんとくずかごへ。
そしてポケットから新しい一本を取り出すその動作は、とても手馴れた自然のものだ。

「みんな、俺みたいな奴を食い物にしてる癖にさ」
「はあ?」
「それなのに、なんだよこの風当たりは。今になっていきなり手のひらを返しやがって」
「?」

煙草に火をつけて、ふう……と灰色のため息。
様になっているのだから始末に終えない。

「みんな喫煙者にきつすぎるよ……」
「……ああ、そういうことか。こんなご時世だからなあ」
「あー、みんなに愛されたい」





屋上から上がった紫煙がゆらゆらと、白い月が光る空へ昇っていく気持ちのいい昼下がり。