棘
何で皆は俺なんかのためにそこまで必死になるんだろうと、ぼんやりと思う。
こんな戦うしか取り柄のない人間、放っておいてくれればいいのに。
誰かに置いていかれる悲しみは。
月夜に出逢ったあの鬼の頭領。
誰かを置いていく悔しさは。
炎に巻かれたあの寂しい少女。
もう味わいたくないのに。味あわせたくないのに。
胸を斬り裂かれた俺は今、いつかの彼らのように誰かに無力感を与えている。
誰かを失って出来る胸の空白。
抜けない後悔の棘。
手遅れかもしれないけれど、この人にはそんな思いさせたくなくて。
まだ思うように動かない身体ででも心配しないで欲しいと笑いかけたら、
ぎこちなくだけど微笑み返してくれたのでよかったとただ単純に思う。
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