黄龍妖魔學園紀 ざわざわと賑わう教室。並べられた机。揃いの制服。注がれる好奇の視線。 懐かしい光景だと、以前の私なら、数ヶ月前までの私ならばそう思ったことだろう。辛いこと大変なことばかりだったけれど、思い返せば一番輝いていた私の高校時代。 23の歳でセーラー服を着た瞬間、その美しい思い出は音を立てて崩れてしまったけれど。 「みんな、静かに。今日から、みんなと一緒にこの天香學園で学ぶことになった、転校生の緋勇高凛さんです」 (あー。何が悲しくてもっかい高校生やらにゃならんのか。そりゃあ確かにもう一度やりたいと思ったよ。高校生に戻りたいと思ったことは一度や二度じゃないよ。でもそれは出来ないと知ってるからこそ言えたことで、つーか花の十代に戻ることが前提で、あー、つーか何やってるんだろう俺。みんな若いなー。虚しすぎて涙が出そうだ) 「緋勇さんは今まで外国で生活していて……」 (こんな姿みんなには見せられないよなー。畜生覚えてろよ何ちゃって安西先生め。逃げないようにばっちり校門まで送ってくれやがって。あー、逃げたい。窓から飛び降りてでも逃げたい。何だこの拷問は。ここにいる全員に俺の年がばれたら一体どう責任をとってくれるつもりなんだ) 「日本に……ご両親の希望で、全寮制の……」 (いっそ何か問題でも起こして退学処分でも受ければこの茶番から逃げられるんだろうか。学校から追い出されるんなら向こうも文句言えないよな) 「わからないことが多くて大変だと思いますが……」 (そうだ、そうしよう。ここに何があるのか知らんが俺には全然関係ないし。さて、年齢詐称以外の問題で退学処分になるには一体何をすれば……) 「そういうわけだから、お互い卒業まで頑張りましょうね?」 「ええ。よろしくお願いします、先生(ニコッ!)」 「自分の八方美人さが憎い…………」 「え、緋勇さん何か言ったー?」 |