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セイ・イット


机に片肘をついて、頬に手を当ててどこかぼんやりと。授業を聞く気は最初からないようだった。
ただ、窓を眺めている。
緩く目を伏せて、何を考えているかわからないようなあの顔で、窓より遠くにある何かを。
ただじっと見詰めている。


「俺にだって抱えているものの一つは二つはあるんですさ」


目が合うと、目を猫のように細めてにやりと笑った。
自分は何もかも知っているのだと言っているような、嫌な笑い方だった。

不安ならば、訊ねればいい。お前は何を知っているのかと。
それが出来ないのは(アイツが何も知っている筈が無いのに)、アイツがあの顔で笑うたびに(何の他意も無い筈なのに)気分がささくれ立つのは、自分が後ろめたいものを抱えているだけだということを思い出してしまうからだろうか。


「俺には関係の無いことだ」


この言い逃れも、段々と効力を失ってきているというのに。