「獏はね、怖い夢を食べてくれるんだ」



白い髪を優しく梳きながら、獏良はゆっくりと言葉を紡ぐ。

「獏は、怖い夢を食べて人を助けてくれるいい動物なんだよ。
悪夢を見たら、獏!って叫んでごらん。きっと助けに来てくれるから。怖いことなんて何にもないよ」

怖い思いをしないように、心安らかでいられるように。

不安げにさ迷う手をしっかりと握って、獏良は微笑みかけた。

「だから、安心してお休み」

「……リョウは?」

不安げに、躊躇いがちにぽつりと落とされた言葉。

どれだけ小さな声でも、それでも彼の言葉は意外なほどすんなりと獏良の耳に届いてゆく。



「リョウが、来てくれないといやだ」



涙が出そうだった。



「……大丈夫」

震える指と指を絡めて、しっかりと彼の手を握る。

離さないように、離れないように。小さなこの手が砂となって消えないように。

獏良は微笑みながら、彼に話しかける。



「僕は、ずっと君のそばにいるから。ずっと一緒だよ」



だから、大丈夫。

子守唄のように言い聞かせて、白い髪を優しく梳きながら。

母親がするように、額にそっとキスを送る。





褐色の肌をした幼い子供は、やがてすぅすぅと穏やかな寝息をたてて眠った。
















優しい夢を見る方法

09.4/25