「獏はね、怖い夢を食べてくれるんだ」
白い髪を優しく梳きながら、獏良はゆっくりと言葉を紡ぐ。
「獏は、怖い夢を食べて人を助けてくれるいい動物なんだよ。
悪夢を見たら、獏!って叫んでごらん。きっと助けに来てくれるから。怖いことなんて何にもないよ」
怖い思いをしないように、心安らかでいられるように。
不安げにさ迷う手をしっかりと握って、獏良は微笑みかけた。
「だから、安心してお休み」
「……リョウは?」
不安げに、躊躇いがちにぽつりと落とされた言葉。
どれだけ小さな声でも、それでも彼の言葉は意外なほどすんなりと獏良の耳に届いてゆく。
「リョウが、来てくれないといやだ」
涙が出そうだった。
「……大丈夫」
震える指と指を絡めて、しっかりと彼の手を握る。
離さないように、離れないように。小さなこの手が砂となって消えないように。
獏良は微笑みながら、彼に話しかける。
「僕は、ずっと君のそばにいるから。ずっと一緒だよ」
だから、大丈夫。
子守唄のように言い聞かせて、白い髪を優しく梳きながら。
母親がするように、額にそっとキスを送る。
褐色の肌をした幼い子供は、やがてすぅすぅと穏やかな寝息をたてて眠った。
優しい夢を見る方法
|