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澄んだ湖に夕陽が沈んでいく様を、政宗は一人、無言で見つめていた。
いつきとカブは、洗濯物を取り込んでたたむ作業にすっかり夢中だ。洗濯をサボり過ぎて、山のように積もった洗濯物をいつきはジャングルジムでも見るように喜んで飛びついていた。
なんて幸せな日常。
座り込んだ足元の草は柔らかく、今まで見てきたどんな絨毯より心地よい。
目の前に広がる綺麗な湖。優しい風が吹く草原。白い雪を残した山脈の群れ。
帽子屋の作業場にこもっていたら、一生見ることができない光景だった。
「不思議だな……こんなに穏やかな気持ちになったのは初めてだ」
佇んでいるだけで、自然に口元が綻んでしまう。
そんな優しい雰囲気がここにはある。
さく、と草を踏む音に政宗は振り向いた。
黒と白の色でできた、幅の広い袖をした服を着て小太郎が立っていた。
一瞬目を見開くが、すぐに視線を湖に戻す。
こんな綺麗な場所なのだ。
いつきを見ていると、愛されて育ったということがよく分かる。
何を心配する必要もない。

「娘たちの心臓を食ってるって噂、嘘だろ」

夕焼け色の湖に映る光景に夢中で、政宗は横を振り向かない。
それでも、小太郎が口元を緩ませて笑ったのは雰囲気でわかった。





















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