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城中に響き渡る絶叫に、家事をひと段落させ暖炉の前でのんびりと新聞を読んでいた政宗は文字通り飛びあがった。
敵戦艦、沿岸部に上陸。なかなか無視できない記事であったが、すさまじい勢いで浴室の扉を開き、二階から下りて来た小太郎の形相に全部が吹き飛んでしまった。
腰布を巻いただけの小太郎は政宗を見つけると、胸倉を掴みかからん勢いで何かを捲くし立てる。
何かを言っているのはわかるのだが、異国語らしく何と言っているのか全く分からない。
「あー、政宗。風呂場の棚いじったろ」
「風呂場ぁ?どういうことだ」
「髪の色を変えるまじないを浴室に置いてるんだよ。コイツ、髪染めてるから」
佐助に言われて、政宗といつきは小太郎の濡れた髪の毛を見る。
不思議な事に、彼の髪の色は瞬きをする間に次々と変わっていくのだ。
シルクのような金髪から、赤毛、茶髪、漆黒、星空のような銀色へと。青紫なんて、人間の髪の色ではない。
「あ、あのー……その色も素敵だと思いますが」
「格好いいべ!小太郎!」
女の子二人の必死のフォローも、小太郎には通じない。
むしろ、似合っているという言葉が致命傷だったようだ。
今にも泣きそうな顔で小太郎は後ずさると、ぐしゃりと椅子に座って頭を抱えた。
何たる絶望、何たる苦しみ!絵画にするならそんな題名が付きそうな嘆き方に政宗は戸惑う。
こんな小太郎、見たことがない。
口を小さく動かして、小太郎が何かを呟いている。
何と言っているか分からないので、政宗は佐助を振り返った。
付き合ってられない、といった風で佐助が通訳してやった。
「こんな姿じゃあ、生きていたって仕方がないってさ」
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