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「おいおい、大丈夫かアンタ」

王宮への階段は馬鹿みたいに長ったらしく、段差が高く幅が広い。一番上まで上るだけでも一苦労だ。
政宗は女になったとはいえ、まだ若いままなのだから少し息を弾ませるだけで済んだ。
だが、車から降ろされ自分の足で歩かなければならなくなった荒地の魔法使いはそうでないようだった。
政宗の声に答える余裕もない。
赤い鉢巻きを巻いた犬を抱えなおして数段下りると、そっと荒地の魔法使いの顔を覗き込む。
一歩足を進めるたび、左の胸を押さえながら苦痛に顔を歪める。顔には汗が薄く吹き出ており、白テンの肩かけを握りしめる病的に白い手が震えているのが見える。
呼吸も酷く乱れていて、いつ倒れてもおかしくはない。
おぼつかない足取りで一歩一歩階段を上っていく荒地の魔法使いの姿が政宗には哀れに見えた。まるで病人だ。
「……なあ、今日はやめといたら?無理だろ」
「……50年。ここを追い出されてから、50年だ」
ぜい、ぜいと息を整えながら荒地の魔法使いが枯れた声を絞り出す。
浮き出た脂汗を拭うこともせず、今にも死んでしまいそうな顔をしてる癖、紫色の仮面の奥では二つの目がギラギラと燃えていた。

「僕たちは、荒れ地でこの日が来るのをずっと待ち続けていたんだよ」





















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