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蛇口から勢いよく水が吹き出る音が聞こえて、政宗は飛び起きた。
額に手を伸ばすと、ぐっしょりと全身嫌な汗をかいている。
「政宗、早く俺と小太郎の契約の秘密を暴いてくれよ」
オレンジ色の炎を燃やして、暖炉から佐助が顔を出した。
普段飄々へらへらとしているくせに、今日の佐助はいつになく深刻な顔をしている。
「俺たち、もう時間がない」
「……佐助。元就が言っていたんだが、小太郎は大切なものをお前に渡したんだってな。何なんだそれは。どこにある?」
「……契約の秘密については喋れないって、前にも言っただろ」
「お前に水をかけて消すって脅したら?」
「うっわ、この人でなし!俺が死んだら小太郎だって死んじゃうんだぜ!」
「このまま放っておいても死ぬんなら同じだろうが!」
「……契約は絶対なんだ。わかってくれよ、政宗」
じゃあ、どうしようもないじゃないか。
喉まで出しかけた言葉を、政宗はぐっと飲み込んだ。
本物の悪魔でさえも逆らうことができないだなんて、よっぽど性質の悪い内容に違いない。
一介の帽子屋の倅である政宗に解くことができる契約なのだろうか。そして契約を破ったとして、その時佐助と小太郎は無事なのか。
「俺たちだって辛いんだ」
俺だって辛い。
顔を見合わせて、政宗と佐助はため息をついた。
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