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黄色の面を選んで扉を開き、政宗は雨の降る荒野へ下りる。
雨に濡れて重くなる髪を払いのけもせず、政宗は眼下に広がる街を見下ろした。
土砂降りの雨にもかかわらず、政宗の育った街に広がる戦火の炎は一向に消える気配が見えない。
「……るな」
政宗を見つけたのだろう、トン、トン、と一本足を動かしてカブ頭の案山子がやってきた。
トン、トン、と地を蹴る特徴的なリズム。聞こえているはずなのに、政宗は顔を上げなかった。
トン、と最後に一つ飛んで、カブ頭は政宗の側に寄り添う。
カブ頭は案山子だから、人間のようにモノを言うことはできない。彼が何を思っていようと、伝えようとしていても。
「ふざけるな!!」
ダン!とぬかるんだ草原を踏みにじって、政宗が叫んだ。
政宗の育った街で、爆弾をたくさん詰め込んだ軍艦相手に小太郎がたった一人で戦っている。元就の手下である、あのゴム人間もたくさんいることだろう。それなのに、彼は自らを異形に変えてまで抗っている。
そんなこと誰も頼んでいないのに。
「ふざけるな、ふざけるなふざけるなふざけるな!!俺を誰だと思っていやがる!俺は女じゃないんだ、守ってくれなんて一言も頼んじゃいねえ!野郎にんなこと言われたって嬉しくなんざねえよ、気持ち悪いだけなんだよ!!魔法使いのくせにんなこともわからねえのかよ!わかれよ、それくらい!勝手に一人で盛り上がって、自己完結してこっちに押し付けて。鬱陶しいったらならねえよ!頭おかしいんじゃねえの!?」
あんな馬鹿知るかと、死んでしまえばいいと言い捨てることができるならどれだけ楽だったろう。
街の上空を飛ぶ、何か黒い塊がゆっくりと地に落ちる様がこの荒野からも見えた。軍艦なのか、小太郎なのかはここからではわからない。
振りしぶく水を切るように、政宗は勢いよく身をひるがえして城へと戻った。
「……俺の迷惑も少しは考えろってんだ」
政宗のあとを、トン、トン、とカブ頭の案山子が当然のようにつき従っていく。
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