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……いつの間に雨は止んだのだろう。
空を見上げると、星空が遠かった。
ぼろぼろと崩れた城に引き摺られ、谷底に落ちた政宗は空を見上げている。目の前の崖は高くて登れそうにない。
プルプルと身体を震わせて埃をはらい、瓦礫の山から幸村が顔をのぞかせたときも茫然と空を見上げるだけだった。
羽を広げて、一隻の軍艦が悠々と政宗の上を横切って行った。
あれも、政宗の住んでいたあの街を焼きに行くのだろうか。小太郎のいるあの街を。
「ワン!ワン、ワン」
「幸村……俺、どうしよう」
袖を引っ張られて、ようやく政宗は視線を下へと降ろす。
それがいけなかった。
「佐助に水をかけちまった……」
言葉にすると、自分が何をしたのか余計に思い知らされる。
炎の悪魔である佐助は、いつも大袈裟すぎるほど水に触れることを恐れていた。
水をかけられたら死んでしまうと、それこそ毎日のように嘆いていたというのに。
「小太郎が死んだらどうしよう…………!」
ぼろり、と涙が左目から溢れて落ちる。
一度流れてしまえば、今まで我慢していた分を取り返すようにぼろぼろと流れて止まらない。
幾粒もの水滴が指の間から零れては、鉄くずの表面を滑り落ちていく。
とうとう堪え切れなくなって、政宗は両手で顔を覆うと声を上げて泣き出した。
「ワン!ワン!ワンワン!」
だから気がつかなかった。
袖を引っ張り、膝に乗って声を張り上げ必死に幸村が伝えようと頑張っている。
政宗が左手に嵌めた銀の指輪が、ほろほろと淡い光を放って一点を指し示していることに。





















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