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まるで空と大地が繋がっているように見える夜だった。
星の光を浴びて湿原がきらきらと輝き、空の銀河は霧に紛れて湿原へと流れていく。
銀河から離れて星が一つ、弧を描いて地面へ落ちた。
次々と星が流れ、流星雨は音を立てて沼へ飛び込んでいく。
じゅっと、焼け石に水をかけるような音。暗い水底には、流れ星のなれの果てである小さなかたまりが次第に光を失っていく。
小太郎は、両腕を伸ばして一つの流れ星をつかまえた。
まわりの水草や夜色の水を照らす、ほの白いグリーンの光。
両手の中に閉じ込めれば、まるで小太郎自身も輝いたように内から照らし出す。
(なんて綺麗なんだろう)
空から落ちた時に分かっていた結末だけれど、佐助はまだ死にたくなかった。
小太郎は、佐助を気の毒と思っただけだったのだ。
だから、二人は契約を結んだ。
佐助を掬った小太郎は、そのまま両手を口元へと運ぶ。
一息に吸い込まれる、流れ星のオレンジ色の輝き。悪魔の炎。
熱かった。
まるで身体の中で炎が暴れているような、今まで感じたことのない熱。
「小太郎!佐助!」
……遠くで、名前を呼ぶ声がした。
ここに生きているものは自分たちしかいないのに。
気のせいかとも思ったが、ふと胸騒ぎを感じて振り返る。泥をかき分け、必死でこちらに手を伸ばそうとする一人の人間。
あの人は、誰なのだろう。
「未来で待ってろ!絶対、行くから!」
「必ず、会いにいくから――!!」
必死な声。切実な響き。
まるで、こちらまで泣きたくなるような優しさに満ちた人。
水面がくずれ、暗闇に落ち行くその顔を二人はしっかりと焼きつける。
綺麗な綺麗な鳶色の目をした愛しい人。
一生忘れることはできないだろうと、そう思った。
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