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瓦礫の山に囲まれて、腐臭を漂わせながら黒灰色の塊がうずくまっている。
そうっと政宗が羽をかきわけると、ガラス玉のように無機質な両目を見つけた。細く引き締まった、端正だった顔。小太郎が人間の名残を残しているのはそれくらいだ。
空ろな視線を一点に張り付けたまま、小太郎はもう何も見ていない。政宗をその目に映して微笑むこともない。
「……待つ必要なんてなかったんだよ、お前は」
両手を回して抱きしめると、政宗は自嘲するように小さく笑った。
「世の中には、俺よりイイ女なんてそれこそ星の数ほどもいるんだぜ?なのに、どうして俺を選ぶのかね」
小太郎は何の反応も返さない。まるで生きた屍のようで、一体どれだけ心を砕けばこんな姿になれるのだろう。
ぽたりぽたりと、傷口からは血が流れている。すっかり汚れきった黒灰色の羽を愛しむように撫でながら、そっと左目を閉じ彼に身体を委ねた。
ここまで来たのだ。
「……一緒に行こうか、小太郎」
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