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「……本当は、わかっているんだよ。秀吉がもう僕の元に帰ってこないことくらい」
政宗に柔らかく抱きしめられて、荒地の魔法使いは諦めたように瞳を閉ざす。
夜気と朝露で冷え切った身体には、染み入るような温もりだった。
秀吉と一緒だった、あの幸せな時間を思い出す。先にいなくなるのは自分だと思っていたのに。
「勝手な考えだけど、もっと、君と早くに出会えていたらと思う」
「……ありがとう、半兵衛」
半兵衛の体に負担をかけないよう、親愛の情を持って彼を抱きしめる。躊躇いがちながらも、彼は片手をまわして政宗を抱きしめ返してくれた。
「せいぜい、大事にすることだね」
「ああ、わかってる」
両手を使い、そっと佐助を手渡される。疲れが重なっているのだろう、佐助はまた小さな炎の塊になっていたし、色も白っぽく薄れていた。
「佐助、生きてるか?」
「……今にも死にそうなくらい、クタクタですよ」
「馬ー鹿」
それでも軽口を叩く佐助に、政宗はほっと安堵して笑う。
やっぱり彼には死んでほしくないと、強く思った。
「心臓を小太郎に返したら、お前は死ぬのか?」
「政宗なら大丈夫だよ。たぶん」
随分と頼りない答えだが、佐助も政宗に笑い返した。ニヤリと口を歪める、あの笑い方だ。
「俺に水をかけても、俺も小太郎も死ななかったからね。だからアンタに頼んだんだ。自分でも気づいてるかい?あのカブ頭を動かしたのだって、アンタのその不思議な力のせいなんだぜ」
「それなら、佐助が千年も長生きできますように!」
政宗は言うと同時に、心の中でも強く念じた。言葉だけでは不安だったからだ。ずっとそれが気がかりだった。
願いながら、小太郎の左胸に佐助をそっと押しつけた。
いつも厄介事が起きるたびに、心臓がドキドキと動くあの場所だ。
思っていたよりも簡単に、すんなりと佐助は小太郎の中に入っていく。心臓が元の場所に還っていく。
すっかり体内に入りきると、虹色の光が方々に飛び出して周囲を明るく染めた。
きらきらと綺麗な緑色を輝かせて、佐助がくるっと政宗たちの上で回転する。
「生きてる!ああ、やっと自由になれた!」
政宗の周りをくるくると軽やかに舞いながら、カブ頭の案山子を飛び越えひゅうと弧を描いて空高くへ登って行った。
「自由だ!」
上空で佐助の歓声が聞こえる。
小さなうめき声を上げて、地上では小太郎が身動きをする。
「動いた!生きてる!」
いつきが嬉しそうに手を叩く。
その瞬間、佐助の魔法が解けて小さくなった城は今度こそ完全に壊れた。





















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