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あっという間に二人の世界から引き離された慶次は、ぽつんとつまらなそうに小石を蹴りあげた。
「しかも政宗、既に男が付いてるしさー。ここで邪魔したら、俺がカボチャと一緒に煮込まれるじゃん」
興味津津、といった風で政宗たちを見守っていたいつきの両目を問答無用で隠して、半兵衛が鼻で笑う。
「出刃亀になるのが嫌なら、君は国に帰ってさっさと戦争でもやめさせるんだね」
「そうすっかなー。でも戦争が終わったらまた遊びに来ていい?」
朱刀をとんと肩にのせ案山子のように腕を絡ませながら、にやりと笑う。
悪戯っぽい笑みは、他の人間が浮かべたなら意地が悪いと評されたかもしれない。しかしこの男が浮かべれば、まるで頭上に輝いている朝日のようにどこまでも清々しく見えるのが不思議ではあった。

「心変りは、人の世の常っていうからさ」

耐え切れなくなって、ふっと半兵衛は顔を綻ばせた。
彼の言葉の正しさについては、つい先ほど自分自身で立証したばかりだ。
「全く、先が楽しみなことだね」
「ワン!」
彼らの足元では、迎えたハッピーエンドに幸村が嬉しそうに走り回っている。




















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水晶玉の向こうで笑っている幸村を見つけ、元就はその秀麗な顔を不快気に歪ませる。
「……この浮気者め。貴様にはもう二度と団子は食わせてやらん」
大好物の団子禁止令を出され、今度は悲しそうに泣きながらあたふたとその場を駆け回る幸村の後ろでは、隣国の王子が朱刀に足をひっかけて荒野を去っていく。彼は、このまま国に帰るのだろう。件の放浪癖がまた出てこなければ。
「それが嫌なら、さっさと帰ってこい」
「元就ーぃ!今度のは凄いぜ!自信作!」
「そうか」
この国の王である元親に設計図を渡されると、元就は中身も見ずにビリビリと破り捨てて焼き焦がした。
「俺の自信作が!」
「……いい加減、このバカげた戦争を終わらせようと思っていたところだ」
ふう、とため息を吐いて頬杖を突く。
たかが兵器一つに国の予算を傾けさせては、偉大なる日輪に顔向けもできないのである。





















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